本園では毎日夕刻になると、先生方が全員集合して「終礼」というものを行っており、各人よりその日の反省や、報告がスピーチされます。その際に私が強く求める報告内容は、先ず園児の事故や怪我に関するもの、次に「失敗」に関するものです。
人間だれしも失敗はつきものです。新人の先生などには「失敗をしないとは、仕事をしていないと同じ意味だ」とまで言っています。そして、「一度目の失敗は経験、二度目の失敗は学び、三度目は警告だから、同じことを三回はするなよ」と付け加えています。
ですから、失敗に関する報告があった場合も、ただ「申し訳ありませんでした」で終わるのではなく、何故その失敗が発生したのかの原因の究明と、再発を防止するため今後どのように対処、改善するのか、までをセットで報告を求めています。失敗して、そこから何も学ばないのが、本当の失敗なのです。
さて、子どもを持つ親の気持ちとしては、我が子に失敗させたくないという気持ちが、強く作用するものです。だから「あなたのために言っているのよ」といった発言が、よく親からなされることがあります。
でも本当に「あなた(子ども)」のことを100%案じて言っているのでしょうか?ほんの1割か2割かもしれませんが、「あなたが失敗して面倒を起こすと、その後始末は親がやらないといけないんだから、勘弁してよね」とか、「勉強しないで、浪人でもされたら、こっちの負担が増えるばかりなんだから、ちゃんとやってよね」などの気持ちが、いくらかでも含まれているのではないでしょうか。(私も身に覚えがあります・・・)
いつも申しておりますように、子どもは連続する「初めて」を体験して、成長していくものです。初めての幼稚園、初めての給食、初めての運動会・・・。更に大きくなれば、初めての試合出場、初めての受験、初めての自動車運転、初めてのデート・・・。
皆さんも振り返って下さい。それら全ての「初めて」に悉(ことごと)く成功しましたか?そんな方は、お一人もいないと思います。
子ども達も、失敗の連続から学んでいきます。コップに水を注ごうとして、こぼしてしまう、鉄棒から落ちる、自転車で転倒する、親としては見ていられないかもしれません。でもそこで「そんなことしないでも良いよ。お母さんが(お父さんが)やってあげるから」としたら、どうなるでしょう。
私が新人の先生に言うように、失敗しないとは、何も経験しないということです。何も経験しないとは、何の成長も無いということです。最も怖いのは、大人の過干渉によって子ども自身の「やってみよう!」という気持ちを萎えさせることです。
子ども達が大きくなったら、皆さんの失敗談を大いにして頂きたいと思います。「いや~、お父さんも小学生の時に、こんなことをやっちゃってね」などの失敗談や、恥ずかしい話をしてあげて下さい。下手なお説教より、はるかに熱心に聞いてくれると思いますよ。