私は読書が趣味というより、活字中毒ともいえる状態で、週に二~三冊、年間では百二~三十冊程度のペースで読み続けています。今年読んだ本の中には、さっぱり理解出来ないものがあったり(「宇宙はなにでできているのか・素粒子物理学で解く宇宙の謎」村山斉/著)、作り話と分かっていながら落涙してしまったり(「日輪の遺産」浅田次郎/著)と様々ですが、最近手にしたこの二冊は、本年度最大の収穫になるような気がします。

先ず、「日本人の九割に英語はいらない」(成毛眞/著)。有名な国内の2つの企業が、今後社内の会話は全て英語にすると宣言して話題になりました。また外資系の企業や、経営トップが外国人の場合、そこの社員さんは英語が必須のように思っていましたが、著者の成毛さんはマイクロソフト日本法人の元社長であり、そのご本人がこのような痛烈なタイトルの本を書かれたのですから、引き込まれるように読みました。
本書の見出しから要点を拾うと「創造力のない人ほど英語を勉強する」、「本当に英語が必要な人は1割」、「石川遼はデビューしてから英語を覚えた」、そして極めつけは「英語ができてもバカはバカ」。

私でも街で地図を片手に不安そうな外国人観光客を見て「Can I help you?」と話しかけるには相当な勇気が要りますし、たまにアメリカに行くと、もっと英語が出来たらなあ、と思います。でもそんなことは何年かに一度のことですから、具体的に決まった明確な目標があるなら話は別ですが、何年かに一度あるかないかの機会に備えて、その他の日々をずっと英語の勉強に費やすというのは、確かに非合理ですよね。

 二冊目は「すごい弁当力!」(佐藤剛史/著)。手づくりのお弁当と、コンビニのお弁当の最大の違いは、「フタを開ける時のワクワク感」にあるとする著者の見解は、実に正しいと思います。この本にはレシピは一切載っていません。また栄養学なども出て来ません。お弁当が子ども達(小学生でも大学生でも)の心をいかに育むかが書かれています。(なお、小学生のお弁当づくりに関しては、拙著「コブタⅢ」のP39~40を参照して下さい)
この本の中より「子の成長は失敗を見守る親しだい」という箇所から、ある小学生の目玉焼きづくりのエピソードを紹介します。
学校に持っていくお弁当のおかずを「目玉焼き」に決めたA君は当日の朝、お母さんが見守る中、初めての目玉焼きに挑戦します。油をひき熱したフライパンに生卵を割りますが、黄身がくずれてしまいます。その時お母さんは、「大丈夫、それはお母さんの目玉焼き。もう一回やってみよう」と励まします。二回目は更に慎重に卵を割りますが、またしても失敗。それを見ていたお父さんが「大丈夫。それはお父さんの目玉焼き。だからもう一回挑戦出来るよ」。そして三回目の挑戦で見事に成功。両親の拍手喝さいを受けて、満面の笑みを浮かべたA君でした。

本園の英会話の目的は勉強ではなく、異文化交流です。給食室が出来ても、お弁当の価値を見失うことなく食育を進めて参ります。