毎年のことですが、行事の多い二学期も、作品展示会でひと段落つく幼稚園です。それでも終業式まで、お餅つき、マラソン大会、クリスマス会と、子ども達にとって楽しい催しが目白押しです。
何かとご迷惑をお掛けしている新園舎の工事も順調に進んでおり、年内には建物が完成する予定です。年明けに外回りの工事が完了すれば、いよいよ年少(ひよこ組)専用の園舎として稼働しますが、これも新しい年を迎えるにあたっての、大きな楽しみです。
さて、毎年必ずあると言ってもいいのですが、保護者より「うちの子が、幼稚園でイジメにあっているようで・・・」というご相談が、時おりあります。
先ず断言しますが、小学校以上にみられるような、集団的あるいは陰湿(乱暴)なイジメなどは、幼稚園では存在しません。
よくあるのは、「ボクは何もしてないのに、○○ちゃんから叩かれた」みたいなケースです。実際は、その○○ちゃんは「ねえねえ」と話しかけるつもりで肩を叩いたのが、当事者とっては、不意に「叩かれた」と受け止めたことが原因です。
年中児(五才)くらいまで、うまく言葉で伝えられない故に「手が出る」ということもあります。嫌なことをされても「やめて」と口で言えなくて、いきなり噛みつくということも年少さんあたりでは、ままあることです。そのような際に幼稚園の先生は、先ず噛みつくとか叩くとは、絶対にしてはいけないことだと非を認めさせ、次に「言いたいことは、お口で言おうね」と諭します。 また言葉のキツイ子がいるのも事実です。「(あなたとは)一緒に遊ばん」とか「ここは座ったらいかん」などです。このような場合でも先生方は、何故そんなことを言ったの、別の言い方はなかったの、と忍耐強く接していきます。そもそも幼稚園児は「口で言って分かる相手」ではないのです。しかしそれを承知で、幼稚園の先生方は「話して聞かせよう」と、懸命な努力を重ねています。
私が園長として先生方にお願いしているのは、第一に状況を正確に把握すること、第二に子どものその時の心情を推し量ることです。行為としてダメなものはダメなのですが、一方では何故そのような行為(言動)をしたのか、その時の子どもの気持ちを、可能な限り汲み取る努力をしなければなりません。先の例で申しますと、事実(肩を叩いた)と、真実(ねえねえと呼びかけたかった)の二つともを把握しなければならないのです。
聖書を考古学として検証している学者によれば、イエス・キリストが12月24日にベツレヘムの馬小屋で生まれた証拠はどこにも無く、つまり「事実」ではないそうです。しかし、多くのキリスト教徒と、クリスマスを心待ちにしている世界中の子ども達の心の中では、この物語は「真実」となっています。事実と真実、どちらが重要でしょうか?そのことをいつも冷静に見極められる親、そして教師でありたいものです。