新年明けましておめでとうございます。今年も子ども達にとって、そして皆様方にとりましてもよい一年になりますよう、祈念致します。
新年早々にカタい話もどうかと思いますし、ましてお説教みたいなものは、読んでももらえないでしょうから、私が冬休み中に読んで、最も笑いそして心が暖かくなった小学生のお話を紹介します。「タカくんの通学路」という実際の話です。
主人公は大分県の山深い所に住む、柳井タカトシ君という小学校五年生です。彼の自宅から小学校までは徒歩で20分の距離ですが、行き帰り各々1時間を要するのです。何故かというと三人のお年寄りに呼び止められるからです。
先ずおばあちゃんから「味噌汁を飲んでいかんね」と誘われます。台所に上がり出来たてのお味噌汁を一杯頂きます。「お茶はいらんね。カルピスもあるよ」と更に勧められますが、遅くなるから行くねと言って、おばあちゃんの家を辞します。
次に小学校の総合学習で、昔から伝わる「神楽」を教えるおじいちゃんに呼び止められます。「このあいだ教えた神楽は、覚えておるか?」という具合です。そこでタカくんはランドセルも降ろさず、そのおじいさんの前で前回教わった神楽を舞います。ここで相当な時間を費やします。ひと通り神楽を舞うと、「ほれ、学校におくれるじゃろ。急いで行かんかい」と促されます。「遅くなったのはアンタのせいだって」と、ツッコミたくなるところですが、タカくんは素直に「うん」と言って再び学校へ向かいます。
最後に会うのが「峠の爺さん」と呼ばれるご老人です。この老人はタカくんの勉強の具合が気になるようで、テストの結果を楽しみにしているそうです。ある社会科のテストですが、私はタカくんの回答に爆笑しました。
問「本能寺を焼き、織田信長を滅ぼしたのは誰ですか?」答「僕じゃありません」問「戦後の日本で急成長した工業は何か?」答「吉本興業」この調子ですから結果は25点。「25点じゃいかんじゃろ」と峠の爺さんが言うと、タカくんは「大丈夫、先生は努力賞をくれたもん
」と返しました。よく見るとそこには「もっと努力しよう」と書かれていました。(笑)こうして毎日タカくんは三つの「関所」を通って学校に行っています。その様子が「微笑ましい」、「地域に教育力がある」と評判になり、TV番組でも取り上げられたことがあるそうです。タカくんは沢山の地域の方々に育まれて、幸せですねという具合です。でも私は、もっと幸せを感じているのは、この三人のご老人の方ではないかと思います。きっとこのご三方は、毎日タカくんからエネルギーを受け取っていることでしょう。ご両親にとって我が子は宝物です。同時に地域社会にとっても、子ども達の存在は宝なのです。今年も立派に育んで参りましょう。