連休を利用して旅行や、お出かけになるご家庭も多いことだと思います。中には新幹線を用いるケースもあるかもしれませんね。博多駅を終点(始発)とする新幹線では見られない光景が、東京駅のプラットホームにはあります。東北、長野、上越新幹線は、終点である東京駅から、直ちに折り返し運転となります。博多駅では九州新幹線や、一部の各駅停車の新幹線を除いて、博多駅に到着した車両は、乗客を降ろしたら、そのまま那珂川町の車両基地に向かい、そこで時間をかけて清掃や整備を行います。ところが東京駅では、全ての車両が折り返し運転をするためそれが出来ません。そこで、「チーム・テッセイ」の登場となります。

チーム・テッセイとは、鉄道整備株式会社(愛称テッセイ)の社員さんことで、その主な仕事はホームに到着した新幹線のお掃除です。私も何度かその現場を見たことがあるのですが、それは「見事」のひと言なのです。

終点である東京駅に到着した新幹線は、平均12分で折り返し運転を行います。その12分の内訳は、乗客が降車するのに2分、掃除に7分、そして新しく乗客が乗るのに3分、そして出発となるのです。これから新幹線に乗ろうとするお客は、ホームで7分間待たされるのですが、普段なら長いと感じる7分間も、窓越しに見えるチーム・テッセイの掃除振りを見ていると、そうは感じません。それどころか、その手際の良さ、スピード、チームワークを感心して見ていると、それこそあっという間に7分間が過ぎるのです。この東京駅の情景を「新幹線劇場」と表した人がいます。

ホームで待たされている乗客が感心するのは、お掃除の様子だけではありません。チーム・テッセイの皆さんは、新幹線の車両がホームに到着する3分前には整列して列車を迎えます。いよいよ新幹線が到着しますと、全員揃って一礼をしながら迎えます。そして乗っていたお客さんが降りてくると「お疲れ様でした」、「ご乗車、有り難うございました」と挨拶をし、7分間の清掃が終わると再びホームに整列して、これから乗車しようとするお客さんに「お待たせしました」と声を掛け、再度一礼をするのです。この「礼儀正しさ」に、人々は何とも言えない清々しさを覚えるのでしょう。

フランスの国鉄総裁が日本のJRを視察に来た際に、最新の新幹線や運行管理システムよりこのチーム・テッセイに感激して、フランスに輸入したいと発言されたそうです。

私が思いますに、その総裁の願望は「無理」というものでしょう。何故なら国民の資質が違い過ぎるからです。フランスなど西欧では、公共の掃除をするのは、社会的に底辺の人の仕事だとの認識があります。しかしテッセイの人達は、自分達の仕事は掃除ではなく「おもてなし」なのだと誇りをもってあります。

この日本人の心を保ち、次世代へと渡していくことも大切な私達の役割だと思います。