今年も沢山の新入園児さんをお迎えして、賑やかな幼稚園が始まりました。ご入園ご進級、それぞれにおめでとうございます。子どもの一年の成長とは、一見すると当たり前のようですが、その背景には数々の出来事や、物語(ドラマ)があります。また一方では、何気ない日常の積み重ねによってつくられるその子の人格や、性格があります。その代表が「挨拶」や「声かけ」なのです。
声の「こ」は、「呼」つまり呼吸を意味していて、息をかける、呼ぶなど上から頂く、つまり天からの贈り物だそうです。そして、「え」は、「得」つまり得る、受け取るなど下から受けるという意味があり、地からのものということです。このように「声」というのは、天のエネルギーと地のエネルギーの間で発生する振動である、という教えを伺ったことがあります。
親は我が子に沢山の声をかけて育てます。人間の子ばかりか、例えばペットの動物などにも姿を見れば声をかけるのが普通です。また園芸(ガーデニング)をなさる方は覚えがあると思いますが、庭木の手入れをしながらも「今年もきれいに咲いてくれたね」などとつい口にして、植物にも声をかけてあげたくなるものです。出来ることならマイナスの言葉より、優しい言葉、プラスの言葉を発したいものですね。特に子どもが幼い時代には、どんな言葉を耳にしながら育つのか、とても重要なことだと思います。家庭では親、幼稚園では先生がどのような言葉を口にし、子どもの耳(心)に届けているのか、各々が日々心がけたいものです。
ある方の体験談なのですが、知人のお宅を訪問した際のことです。その家には一輪挿しのお花が、ところどころに飾られていたそうです。すると三歳くらいのお嬢さんが、お母さんからの言いつけでしょうか、そのお花を取り換えようと、花を集めて捨てていたそうですが、その時なにかつぶやいていました。その子は、しおれた花をゴミ箱に入れる時に「ごくろうちゃま」「ごくろうちゃま」と言っていたそうなのです。どうしてそんなことを言うのと尋ねると、「だって、ママがいつもそう言っているもん」という答えが返ってきたとのことです。
この小さなエピソードから私達は次の二点を学ぶことが出来ます。この子の母親は「お花を捨てる時は、ご苦労様と言いなさい」という躾は行っていないと思います。普段、母親が発している言葉を耳にして、心に深く残っているからこそ自然と口に出てくるのでしょう。二つ目には、きっとこの子は「ご苦労様」の意味を理解出来ていないと思います。しかし、大きくなってこの言葉の意味を理解した時、自分がしてきたことに喜びや、誇りを感じることでしょう。きれいな心は、きれいな言葉から生まれるのです。