ご入園、ご進級おめでとうございます。本年度も何卒よろしくお願い申し上げます。
なっちゃんが いいました。
「ママ、ちょっとだけ だっこして」
これは『ちょっとだけ』という絵本で、主人公の「なっちゃん」が、お母さんにお願いをしている場面です。最近赤ちゃんが生まれ、なっちゃんはお姉さんになったのですが、お母さんは赤ちゃんにつきっきりです。そこでなっちゃんは、自分のことは何でも自分でしようと頑張りますが、ある時どうしても眠くなってしまいました。
私はお姉さんだから、と我慢していましたが、そこはまだ幼い子ですから、ふと漏らした言葉が「ママ、ちょっとだけ だっこして」だったのです。
お母さんは優しく笑って「ちょっとだけじゃくて、沢山だっこしたいんですけど、いいですか?」と言いました。なっちゃんは「いいですよ!」と答え、ママの匂いに包まれていっぱいだっこしてもらいました、というお話です。
園児の下に乳児がいるご家庭では、こんな場面がよくあると思います。上の子も充分にかまってあげないといけない、と分かってはいるが、どうしても赤ちゃんに手がかかるので・・・とするお母様方からのお悩みや、お話はよく耳にします。
またこのようなご家庭では、上の子に「もうお兄ちゃん(お姉ちゃん)なんだから、我慢しなさい」との発言もあるかもしれません。
園児くらいの年齢の子でも、その家庭内の状況を理解出来ますから、健気にも自立しようと頑張ります。でも甘えたい気持ちは、常にあるのです。
私は保護者向けの講演会でも、入園説明会でも「幼児期に最も大切なことは、子どもが『愛されている実感』をいつも感じられることだ」と申しています。
そうしますと「園長の考えは分かる。私もそうだと思う。でも実際の生活は、何かと忙しくて、しょっちゅう抱きしめる訳にもいかないし、親子で出掛けたり、一緒に何かしたりする時間など、なかなかとれないのです」という皆さんの心の声が、聞こえてきそうです。
そんな皆様に、お勧めをします。子どもが何か話しかけて来たら「な~に」と言葉を発する際に、にっこり笑顔を浮かべて下さい。その笑顔が自分に向けられたものであると分かった子は「愛されている実感」をもつことが出来ます。
食事の用意や、後片付けをしているママは手がふさがっているものです。そんな時も子どもが話しかけてきたら、お顔だけ笑顔を見せて、そして「あとでね」と約束して下さい。
新聞を読んでいるパパに子どもが話しかけてきたら、紙面から顔を上げて「なんだい」と笑顔を向けて下さい。
わずか数秒で出来る「愛されている実感」の与え方です。これなら出来るでしょ?