巻末の「先生方からひとこと」では、今月のテーマが「夏の思い出」となっています。保護者の皆様方にも、いろいろな「夏の思い出」があるかと思います。中には学生時代の夏休みに、自動車の運転免許を取得するため教習所に通ったという方もあるでしょう。
島根県の益田市に、マスダドライビングスクールという教習所があります。益田市は人口が5万人ほどの小さな町です。その小さな町にある自動車教習所の年間卒業生数が、永い間、全国ベスト10を外れたことがないという、驚きの事実があります。
私もはるか昔に、教習所に通いました。卒業検定に合格すると「二度とこんな所に来るもんか」と思ったものです。ところが、このマスダドライビングスクールを卒業する際は、皆さん全員が涙を流して別れを惜しむというのです。更には「同窓会」があったり、結婚式をこの教習所で挙げさせて欲しいと願う人や、新婚旅行で訪れる人もいるそうです。なぜ・・・?
評判を聞いて、私は一度この教習所を視察に行ったことがあります。そこで分かったことが二つ。一つは、合宿制であること。全国各地から若者が集まり、1部屋5~6名の相部屋での共同生活を送るのです。子どものころから「個室」が当たり前で過ごして来た若者達にとって、見ず知らずの人達と寝食を共にするのは、新鮮な体験でしょう。
二つ目は、この教習所では運転の技術だけではなく、挨拶や掃除を奨励し、教習生の「心」を育てようとしているところです。
さて、この教習所では卒業を前にして、次の話を教習生にするそうです。
「これから君達は家を出る時、帰った時に必ず『行って参ります(きます)』、『ただ今帰りました』と、きちんと挨拶をしなさい。そうすると君達は『家の宝』となる。ショッピングセンター等の広い駐車場に車を停める際は、なるべく出入り口から遠い所に停め、出入り口に近い場所は、お年寄りや妊婦さんの車両のために残しておきなさい。そうすると君達は『地域の宝』となる。電車に乗ったら座席に座らず、立っておきなさい。そうすると君達は『国の宝』となる」
この話を聞いた若い人達は「カッコイイよな、それって」という反応をするそうです。反対に私達は、この若者達から「カッコ悪いよな、それって」と、言われないように気をつけなければいけませんね。
またこの教習所の職員(つまり先生達)の駐車場には「世界一美しい駐車を目指します」との看板が掲げられています。運転技術を教えるプロの指導員であれば、それくらい出来て当然だ、とする心意気が感じられます。
この話に触発された本園の先生方は、何か出来ることから始めようと相談しました。その結果、先生方が使用する傘立てに次のプレートが付けられています。
「世界一美しい傘立てを目指します」
職員室のある「おそらの棟」、その正面左端にその職員用傘立てがありますから、雨の日にちょっと覗いてみて下さい。
2016.07.06