八月に行われたフジタバレエ研究所の発表会には、沢山の在園・卒園児さんが出演して、長時間に渡る公演にもかかわらず、最後までしっかり演じていました。

「私はアイドルになりたかった。でも、叶わなかった。だからこの子に、私の夢を託すの」、「私の夫は学歴がないから、立派な会社に就職出来なかった。だから我が子には、いい学校に入って欲しい」。

親として我が子に期待するのは、当然です。また親が子どもの頃に叶えることが出来なかった夢を、子どもに託す心理も分からないではありません。でも自分の希望や夢を、一方的に子どもに押しつけているだけではないかと、時には省みる必要があると思います。

「鳶(トンビ)が鷹(タカ)を産む」という言葉をご存知ですか?凡庸な夫婦間に特別優秀な子どもが出来た、あるいは滅多に無いことが起きたという意味で用いられます。

男子プロゴルファー石川遼選手の父親である石川勝美氏は、ある時「トンビはタカを産みません」と明言されました。ご存知のように勝美氏は信用金庫に勤務していたサラーマンで、ゴルフはお付き合い程度の腕前です。これは私の推測ですが、石川選手がセンセーショナルなデビュー(現役高校生がプロの試合で優勝)を果たした際に、周囲の人々から散々「トンビがタカを産んだねえ」と、言われた(からかわれた)経験があったのではないでしょうか。 勝美氏は先の言葉に続けて、こう言います。

「しかし今、トンビがタカになろうと、もがいています」勝美氏の言う通り、普通の両親から突然、特別な才能をもった子どもが生まれてくることは滅多にありません。

息子の立場から考えて、自分の父親を越えることすら容易なことではないのです。実際、殆ど越えられないでしょう。私の父は74才でこの世を去りましたが、私が74才になった時には「やはり越えられなかったな」と、感じることだと思います。

そのような中で、何かひとつでも子どもの中に自分を越える分野を発見する喜びが、親にはあります。私事ですが、私は小学校時代の駆けっこでは、常にビリでした。しかし、長男の正喜先生は小6の時に100M競技で福岡県優勝、そして全国大会では5位に入賞しました。その時に「これでひとつ、親を確実に越えるものが見つかった」と、嬉しく感じたことを覚えています。

慌てずに、じっくり見つけてみませんか?