島根県隠岐の島に海士町という所があり、この町のスローガンは、「ないものはない」というユニークなものだそうです。日本語で「ないものはない」と言った場合には、二つの意味があります。
一つは「新車を買いたいと言っても、我が家にはお金が無いから買えません。ないものはない!」というふうに使う場合と、もう一つには「この店には世界中の商品が揃っております。無いものは一つもございません」というふうに全部ある、という意味でも使われます。この海土町のスローガン「ないものはない」も、次の二通りの意味が込められています。

①都会では普通にあるもの(たとえばコンビニや遊園地など)が、本当にないということ。都会の流行や最先端のものは何もないけど、ないものを悔やんだり、妬んだりは全くしない。それどころか、なくて良いんだと割り切っている、ないほうが良いんだとも達観しているようにも思えます。

②ないものはないという二重否定。ないの二重否定だから、何でもあるということ。
本当に大切なモノやコトは何でもある。誰でもが挨拶しあう習慣、自然の有り余るほどの恵み、近隣との濃密な人間関係など。他人が持っている物を欲しがる必要は、ありません。自分がすでに持っているモノとコト(家族、友人、仕事、健康など)の再発見と、その伸展こそ大切なのだと教えてくれる、とても素晴らしいスローガンだと思います。「ないものはない」のです。「足るを知る」という言葉もありますが、本質的に同じ意味をもっているようです。

先月で阪神淡路大震災から17年が経過しました。来月になりますと東日本大震災から2年になります。 当時私達は、何も出来ない「もどかしさ」と、日常の普通の暮らしや、何気ない毎日がどれほど貴重で、何よりも大切であるのかを気づかされました。
家族の絆、親子のふれ合い、子どもの成長・・・。これ以上に価値あるものが、大切なものがあるでしょうか。それぞれのご家庭には「ないものはない」のです。

私事ですが、昨年暮れに通算で六冊目となる本が出来ました。これは三年ごとに皆様のお手元にも差し上げる「コブタヌキツネコ」と違って、幼稚園経営に関する内容の本です。今回は特に幼稚園の後継者や、若手の先生方をイメージして書きました。ですから、普通の保護者がお読みになることを、全く想定せずに綴りましたが、中には「先生たちの声」として現役職員からのメッセージがあったり、自筆のイラストも掲載されています。
ご興味のある方がいらっしゃいましたら、事務所で販売しています(1冊2.000円)。この売価2.000円の全額は、被災した東北地方の私立幼稚園協会に全額寄付されます。