登園練習「初めての行ってきます」の間、幼稚園の桜は満開で、新しい園児さん達を春の日差しと共に、美しく迎えてくれました。
この度のご入園、ご進級おめでとうございます。今年も子ども達の成長と、楽しい経験のために園長以下職員一同、精一杯お世話をさせて頂きますので、何卒よろしくお願い申し上げます。
本年度は本園が開園して50年目にあたります。ですから先の入園式も「第50回入園式」でしたし、今年の運動会などの主要行事も全て「第50回」ということになります。ただし、本園はその前身である「南薫幼児園」が始まった昭和24年を創立起源としていますから、そこからカウントすると63年目となります。
ちなみに創立記念日という日は、開園式の日や、最初の入園式があった日と定めるべきなのでしょうが、半世紀以上前のことなので正確な日付が分かりません。そこで後年になって、学校法人の県知事認可を受けた日「昭和50年5月1日」をもって、5月1日を本園の創立記念日と定めました。
人に誕生日や、結婚記念日などの「原点」があるように、幼稚園にも原点があります。本園を創設した藤田貞雄先生(明治41年~昭和57年)は、昭和10年から浮羽郡の尋常小学校の先生として勤務し、同15年からは青島(中国)の国民学校に赴任し、校長として終戦を現地で迎えました。
戦争の焼け跡が残る久留米に戻った貞雄先生は、これからの日本の復興には教育が欠かせないことと、子ども達の教育は義務教育である小学校からでは遅いことを痛感し(永く小学校の教育現場にいた人の考えですから、説得力があります)、幼児教育を五穀神社の境内で、一台の木製足踏みオルガンと、僅かな机椅子で始めます。それが昭和24年のことで、ここに本園の原点があります。
貞雄先生は小学校の教育が、いわゆる「読み書きソロバン」に代表される「智(あたま)」の教育に対して、幼児期の教育は「情(こころ)」の教育が大切だと考えられました。ですから、先述した昭和24年の南薫幼児園と同時に「藤田舞踊研究所」をも開設し、音楽や舞踊を通じて子ども達の豊かな情操教育にも取り組みました。それが本園に隣接し、姉妹関係にあるフジタバレエ研究所なのです。貞雄先生の「情(こころ)」に重きをおく教育、これが本園の「二つめの原点」です。
子ども達に年齢に応じた「智(あたま)」の教育は、もちろん大切ですが、その前に「情(こころ)」の教育が十分になされていることが前提条件になるのは、現代でも変わらない真理だと思います。
情操、情緒、感情、情熱、そして人情と大切な言葉には「情」が付いていますね。特に昨年の大震災に際して、世界中が驚嘆し、讃美した日本人の態度や行動は、この日本人のみが持つ美しい「情」が表出したものでした。
今年も態度教育を土台として、子ども達に美しい「情」の心もちが豊かに育ちますよう、邁進して参ります。